YouTube CEOを育てたシリコンバレーのゴッドマザーによる世界一の教育法。
そう呼ばれるエスター・ウォジスキーによる教育法「TRICK」について解説しているのが、こちらの本です。
この記事では、エスターが教育において大切にしている「TRICK」の意味や、わたしがエスターの教育スタイルを取り入れてみたいと思った理由を紹介します。
自身の3人の娘も、YouTube CEO、カリフォルニア大学医学部准教授、バイオベンチャー23andMe創業CEOとそれぞれ社会に出てから大活躍している。
その実績から、アメリカ教育界のスターとして注目を浴び「シリコンバレーのゴッドマザー」と呼ばれている。
エスターのTRICKとはどんな教育方法?
TRICKとは、これからの社会を幸せに生き抜くための教育法です。
ルールに従うことが生き抜くためのスキルだった時代は終わり、これからの子どもたちが生きる時代はイノベーションを起こすこと、創意工夫をすることなどが重要なスキルになってきます。
親が進める進路や職業が消滅するかもしれない時代。
エスターが唱えるTRICKには、そんな激動の時代をわが子が生き抜いていくための教育のヒントがつまっています。
TRICKは5つの英単語の頭文字
TRICKとは、信頼(Trust)、尊重(Respect)、自立(Independence)、協力(Collaboration)、優しさ(Kindness)の頭文字を繋げた言葉。
エスターが教育や子育てにおいて大切にしていることがこれらのキーワードに集約されています。
エスターの考えは次のとおり。
信頼(TRUST)
大人が自分の親としての選択に自信を持ち、子どもを信頼することで子どもの自立を促す。親がまわりの情報に振り回されたり、心配しすぎたりせず、子ども信じてまかせることが子どもの成長につながる。
尊重(RESPECT)
親が子どもの個性と自主性を尊重することが大切。これからは「情熱」が「成功」につながる時代。情熱は強制からは生まれない。
自立(INDEPENDENCE)
自立した子どもは、挫折や失敗に負けない力がある。子どもに完璧を求めず、失敗しても見守る姿勢が大切。
協力(COLLABORATION)
協力することの大切さを子どもに教えることは重要。子の自己肯定感も上がり、自信がつく。親は、命令ではなく子どもの考えを聞いて一緒に解決策を探すよう心がける。社会では敵対する相手との協力も必要。
優しさ(KINDNESS)
優しさは自分も周りの人も幸せにする。社会に出ても重要なスキルの一つ。
子どもを信頼し、敬意を払うこと。
それによって、独立心や他者と協力しする力や優しさを育む。
21世紀を生き抜き、幸せになるためには、まず自立していること、そして他者と協力し合う力、共感できる優しさが大切だと言います。
TRICKと対比される教育スタイル
TRICKと対比される教育スタイルとして、本の中でも言及されている次の2つの教育スタイルがあります。
親の物差しで「子どもによいこと」を決めて、成功につながるよう子どもの行動を強制するのが親の努めとする。
(例:習い事は親が決める、常に1番の成績を求める)
自立心を育むことや自分で何かを始めるなどのスキルが身につかないデメリットが懸念される。
子どもに襲いかかる障害を全て親が取り除くような子育てスタイル。
いわゆる過保護。
少子化、恐れの文化の広がり、親のプライドの高さなどが要因。
子どもが無力になる、意見を主張することや間違えること、親を失望させることへの恐怖心を抱くなどのデメリットが懸念される。
エスターはタイガー・マザーやヘリコプター・ペアレント式の子育てに、高校教師としてたくさんの親子を見てきた経験から警鐘を鳴らしています。
TRICKを自分の子育てに取り入れてみたいと思った
最近は、少子化の影響で子ども一人当たりにかけられる親のエネルギーやお金が増えたこともあり、知育が過熱しています。
わたし自身も、わが子には不確実な世の中でも自分で食べていくための何かしらの能力や精神力、体力を備えてほしいと願っています。
ですが、その思いが強すぎるために、過保護になりすぎてなんでも手取り足取り教えたくなってしまうことも。
そんなときに思い出したいのがTRICKの考え方です。
特に、過保護になりすぎることについてはIndependence(自立)の章で、次のように述べています。
過保護な親のもとで育つ子どもたちは、自分で何をしたらいいかわからず、恐れや困難や失敗を乗り越えることができなくなる。
子どもは大人が思っている以上にずっと賢くて、一から十まで教えなくても自ら学ぶ力があります
それに、なんでも「教えてあげなくちゃ」「助けてあげなくちゃ」では親も疲れてしまう。
そんなことをずっと続けることはできないので、自分で考えて自分で行動できるようにするのが親の役割なのだとTRICKを読んで再認識しました。
本の中でも何度か登場するエスターのエピソードで、「8歳の孫2人を自分たちだけで新学期の準備リストの買い物をするために量販店に置いて買い物させたところ娘が激怒した」というものがあります。
通学ですら、子どもたちだけでさせてはいけないアメリカでは、量販店に幼い子どもだけで買い物をさせるというのはかなりぶっ飛んでいることだそう。
ですが、エスターは危険がないことを確認した上で、子どもたちだけで行かせたのです。
さらに、子どもたちとの旅行のときには、目的地までの行き方を子どもに決めてもらうなど、とにかく小さいうちから自己決定の機会をたくさん与えて自立を促したそう。
自分で選択することは自主性を育てる絶好の機会とエスターは言います。
「お家と公園どっちで遊ぶ?」
「晩御飯のつけ合わせの野菜は何にする?」
「工作に使いた材料をお店で自分で選んでみていいよ」
など、小さいうちからでもできる自己決定は日常にたくさん。
日常の中の自己決定の繰り返しで、自己肯定感や自主性を高め、人生の大きな決断を自分でできる子に育てていくことは大切だと感じます。
TRICKの要素である信頼、尊敬、自立、協力、優しさは、ごくごく当たり前のことなのですが、色々な情報に惑わされ「あれも子どものためになりそう」などうまく取捨選択ができなくなってしまうとつい見落としがちになってしまう大切なことを思い出させてくれる合言葉だと感じました。
TRICKはこんな人におすすめ
- 知育を頑張らなきゃと焦りを感じている人
- どうしても子どもに過保護になってしまう人
- 世界的な成功者を生んだ教育方法が知りたい人
まとめ
TRICKはわが子を思うあまりに「なんでもやってあげたい・教えてあげたい」「安全な道に導いてあげたい」「優秀に育てなければ」などと力が入ってしまったときに読みたい一冊です。