「親への仕送りって、みんなどれくらいしているの?」 「平均額を知りたい」 「親にいくら渡せばいいのか、正直よくわからない」
そんな声を、私自身もこれまで何度も耳にしてきました。
インターネットで検索すれば、仕送りの平均額はすぐに出てきます。でも、その数字を見て「うちはこれで足りているのだろうか」「もっと渡すべきなのでは」と、かえって不安になってしまう方も少なくありません。
結論からお伝えすると、仕送りに”絶対の正解”はありません。金額そのものよりも大切なのは、親子でお互いの状況を知り、無理なく続けられる形を一緒に見つけていくことです。
この記事では、仕送りの平均額を紹介しながら、家族だからこそ大切にしたい「対話」について、一緒に考えていきます。
親への仕送りの平均額はいくら?
平均額とボリュームゾーン
厚生労働省「国民生活基礎調査(令和4年)」によると、親に定期的な仕送りをしている世帯は全体のわずか2.1%ほどです。決して多くはありませんが、その中での平均額は、月およそ5万6,000円という結果が出ています。
金額帯別に見ると、もっとも多いのは「2万〜4万円未満」で、全体の約3割を占めています。次いで「4万〜6万円未満」が2割ほど。一方で「10万円以上」を仕送りしている世帯も一定数あり、医療費や介護費といった特別な事情を抱えているケースが多いと考えられます。
つまり、日常的な生活費を補う程度の、無理のない金額で続けている家庭が中心だということです。
平均は参考にしかならない理由
とはいえ、この「平均5万6,000円」という数字を、そのまま自分の家庭にあてはめる必要はありません。仕送りの適正額は、家庭ごとの状況によって大きく変わるからです。
- 親の年金額
- 親の貯蓄状況
- 兄弟姉妹の人数と分担の有無
- 自分たち子ども世帯の家計状況
- 親が持ち家か賃貸か
これだけの条件が違えば、必要な仕送り額も、無理なく出せる金額も、家庭の数だけ違って当然です。「平均並みに渡せていないから自分は親不孝だ」と感じる必要はまったくありません。平均額は、あくまで「他の家庭はこのくらいなんだ」と知るための、ひとつの参考情報にすぎないのです。
平均額では解決できない「親子のすれ違い」
数字の話だけでは見えてこない、もうひとつの現実があります。それは、仕送りをめぐって親子の気持ちがすれ違ってしまうことがある、ということです。
あるネット記事では、こんな事例が紹介されていました。生活に困る母親を支えるため、息子が毎月仕送りを続けていました。ところが母親は「孫に喜んでもらいたい」という気持ちから、その仕送りの一部で孫への誕生日プレゼントを購入します。それを知った息子は「そのお金は生活を支えるために送っていたのに」と感じ、仕送りを続けることが難しいと母親に伝えることになりました。
母は孫を喜ばせたい一心で、息子は親の生活を守りたい一心で、どちらも相手を思う気持ちからの行動でした。それなのに、金額の使い道に対する認識の違いが、親子の間に小さな溝を生んでしまったのです。
どちらが悪いのではなく、お互いの状況を知らなかっただけ
母も息子も、間違っていたわけではない
この事例を振り返ると、母親も息子も、決して間違ったことをしたわけではありません。
- 母は、孫を喜ばせたかった
- 息子は、親の暮らしを支えたかった
どちらも、家族を思う気持ちから生まれた行動です。ただ、お互いの生活が具体的にどうなっているのか、仕送りに込めた意味は何なのか、それを言葉にして共有できていなかった。すれ違いの正体は、悪意でも無責任さでもなく、「知らなかっただけ」なのです。
保険業界で見えてきたこと
私は以前、保険業界で働いていました。その中で強く感じたのは、多くの親世代は決して「お金にルーズだった」わけではなく、そもそもお金について学ぶ機会がほとんどなかった、ということです。年金生活になって初めて「思っていたより生活が苦しい」と気づく家庭も少なくありません。一方で、子育て世代もまた、教育費や住宅ローン、物価高などに追われ、経済的な余裕があるとは言えない状況です。
だからこそ、親だけが悪いわけでも、子どもだけが悪いわけでもありません。それぞれが、それぞれの立場で精一杯やっている。そのうえで、お互いの状況を知る機会が足りていないだけなのです。
家族だからこそ、お金の話をしてほしい
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
仕送りをめぐるすれ違いを防ぐために必要なのは、金額を決めることそのものではありません。まず、家族みんなで今の状況を共有すること。それが何より大切な出発点になります。
話し合っておきたいことの例を挙げてみます。
- 親の毎月の生活費はどのくらいか
- 年金額はどれくらいか
- 貯蓄はどの程度あるか
- 子ども世帯の家計に、どれだけの余裕があるか
- 兄弟姉妹で分担できる部分はないか
- 一時的な援助なのか、継続的な支援が必要なのか
こうした項目を一度にすべて話す必要はありません。「最近、生活で困っていることはある?」「うちも正直、教育費がかさんでいて」といった何気ない会話の延長線上で、少しずつ共有していくだけで十分です。
大切なのは、仕送り額という「結果」を先に決めるのではなく、お互いの状況という「事実」を先に知ること。そうすれば、金額は自然と、無理のない現実的なところに落ち着いていきます。そしてもし将来、状況が変わったときにも、話し合える関係があれば、そのつど見直していくことができます。
わかっていても、話しにくいのが本音
「話し合いが大切なのは分かっている。でも、実際には切り出しにくい」
そう感じる方は、決して少なくありません。
親世代にとって、お金の話は「はしたないもの」「人に見せるものではない」という価値観の中で育ってきた方も多く、子どもからお金のことを聞かれること自体に、身構えてしまうケースがあります。子どもの側も、「生活が苦しいのでは」と勘ぐっているように受け取られたくない、親のプライドを傷つけたくない、という気持ちがブレーキになりがちです。
つまり、話し合いにくさの正体は、どちらかの人柄の問題ではなく、「お金の話=改まった、重たい話」という思い込みそのものにあることが多いのです。だとすれば、必要なのは勇気を振り絞って一大決心で切り出すことではなく、重たくならない形に、話の持っていき方を設計し直すことです。
「大きな話し合い」ではなく「小さな会話」を積み重ねる
一度で全部を話そうとすると、どうしても構えてしまいます。おすすめしたいのは、日常会話の中に、お金の話題を少しずつ紛れ込ませていくやり方です。
- 「最近、電気代とか値上がりしてない?うちも大変で」——物価の話から自然に生活費へ
- 「お母さんの年金って、月どのくらいもらえるものなの?今さらだけど気になって」——制度の話として聞く
- 「もし何かあったとき、実家の名義とか通帳とか、私も把握しておいた方がいいかな」——万一への備えとして
- 「兄さんとも最近、お母さんのこと話しててさ」——一人で背負っていないことを伝える
いきなり「仕送りをいくら渡せばいい?」と聞くのではなく、まずは相手の暮らしぶりに関心を向ける言葉から始めてみる。これだけで、受け取られ方はずいぶん変わります。
話しやすいタイミングを「仕組み」にしておく
話し合いを、その場の思いつきやタイミング頼みにしてしまうと、結局「言い出せないまま今日も終わった」ということになりがちです。むしろ、話しやすい場面をあらかじめ決めておくと、ぐっとハードルが下がります。
- 帰省したときの、車の中や食後の何気ない時間
- 電話で近況報告をするときの、締めくくりの一言
- お盆や年末年始など、家族が集まるタイミング
- 役所からの通知(年金、介護保険など)が届いたときの「これ、どうなってるの?」
「ここで話す」と決めておけば、毎回ゼロから勇気を出す必要がなくなります。一度にすべてを聞き出そうとせず、「今日はこれだけ分かればいい」というくらいの軽さで、何度かに分けて少しずつ状況を共有していく。そのくらいの気楽さで、ちょうどいいのです。
親孝行は、お金だけではありません
ここまで仕送りの話をしてきましたが、親孝行はお金の多さだけで測れるものではない、ということも忘れずにお伝えしたいと思います。
- 電話やビデオ通話で近況を話す
- 孫の写真や動画を送る
- 一緒に食事をする時間をつくる
- 帰省して、顔を見せる
- 「ありがとう」を言葉にして伝える
こうした小さな行動のひとつひとつも、立派な親孝行です。仕送りができる状況にない方も、決して負い目を感じる必要はありません。むしろ、お金では代えられない安心感を、これらの行動が親御さんに届けてくれることも多いのです。
親孝行とは、結局のところ「あなたのことを忘れていないよ」という気持ちを、形にして伝え続けることなのだと思います。その形は、お金であってもいいし、電話の一本であってもいい。大切なのは、続けられる形を自分たちなりに見つけることです。

まとめ|仕送りの正解は「平均額」ではなく、家族で決めるもの
仕送りの平均額は、たしかに参考になります。でも、その数字だけで、あなたの家庭にとっての正解が決まるわけではありません。
大切なのは、お互いの生活や気持ちを知り、無理なく続けられる形を家族で話し合うこと。そして、仕送りができてもできなくても、親孝行の形はひとつではないと知っておくことです。
親孝行は、お金の多さではなく、「相手を思いやる気持ち」と「対話」から始まるのではないでしょうか。今日、電話を一本かけてみることから、始めてみませんか。
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査(令和4年)」


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